「100%田植えを辞めます」と宣言した鳥取の米農家・徳本修一さんが、田植えを再開するまで
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「来年僕たちは
100%田植えを辞めます!」

 

2021年11月、
鳥取の米農家が
YouTubeでこう宣言しました。

 

それから4年あまりたった
2026年4月、
同じチャンネルに
「【大切なご報告】
当社は経営の大転換点を
迎えました」
という動画が上がります。

 

中身は、
田植えを再開するという
報告でした。

 

発信しているのは、
鳥取市の
トゥリーアンドノーフ株式会社と、
代表取締役の
徳本修一さんです。

 

この記事では、
チャンネルの説明欄と
公開中の動画、
会社の公式サイト、
それに外部の記事や
公的機関の記録から、
宣言から再開までと、
その周りの活動を
たどってみます。

 

登録者数や本数、
再生回数は、
2026年11月6日
午後10時20分ごろに
当サイトが測った値です。

農業法人トゥリーアンドノーフのチャンネル(2026年11月6日時点)

YouTubeチャンネルの名前は
「農業法人トゥリーアンドノーフ」、
ハンドルは
「@treeandnorf」です。
開設は
2019年11月25日でした。

 

2026年11月6日時点の登録者は
7.46万人、
総再生回数は
2,533万回あまりです。

 

チャンネルの表示では
動画は406本です。
誰でも見られる
動画の一覧には246本が並び、
そのうち1本は
まだ始まっていない
ライブ配信の予定枠でした。
これを除いた
公開中の動画は245本です。

 

説明欄には、
会社のことが
こう書かれています。

 

「トゥリーアンドノーフは、
鳥取県で水稲生産を主とする
土地利用型農業法人です。」

 

続けて、
いちばん大事なのは
「圃場の基盤整備と
大区画化であり
農業土木のアップデート」
だとし、
「AIやバイテク品種の活用」も
この土台があってこそ、
と書いていました。

 

再生がいちばん多いのは、
2020年9月の
「これがベスト!
年間40ha草刈りする僕たちが
オススメする最高の草刈機(刈払機)はコレだ!」
で、133万回あまりです。

 

2位は
「雑草の帝王「クズ(葛)」を
撃退する方法」
(123万回あまり)でした。

 

上位5本のうち4本が、
草刈りや除草、
畦塗りの回でした。

 

田んぼの外周の草と
毎年向き合う農家にとって、
いちばん切実な
話題なのでしょうね。

消防士から農家へ。野菜の失敗と、2019年ごろの水稲への転換

徳本さんの前歴は
少し変わっています。

 

公式サイトのメンバー紹介には
「消防士、芸能マネージャー、
歌手、ITベンチャー役員など、
異分野での経験を経て、
地元鳥取で農業に参入。」
とあります。

 

マイナビ農業の2023年11月の記事の
プロフィール欄も、
同じ4つの職を挙げたうえで
「2012年に鳥取県鳥取市で
トゥリーアンドノーフを設立。」
と書いていました。

 

この記事は
マイナビ農業のスタッフが
トゥリーアンドノーフの田んぼで
6条刈りのコンバインに乗る
「コラボ企画」で、
徳本さんの招きで
実現した稲刈り体験です。

 

始まりは
野菜でした。
公式サイトの「私たちのこと」によると、
創業当初は
「固定種(+多品目)」
「有機栽培」「大規模」
という3つのテーマで
生産していたものの
「連続して失敗。」
小松菜に絞って
延べ20ヘクタールで
有機栽培したあと、
「2019年頃に適地適作に立ち帰り、
水稲に転換」
したそうです。

 

埼玉県議会の
環境農林委員会の視察報告
(2024年2月掲載)にも、
「全く収穫できない状況が
3年ほど続いた。」
と、同じ経緯が出てきます。

 

社名の由来も
公式サイトにあります。
野菜を作る土地を探していて
出会った農村に
「大タブの木」が立っていて、
その木(トゥリー)の下で
農作業をする自分たち
(農夫=ノーフ)の姿が
目に浮かんだ、
ということです。

 

いまの社名の
少し変わった響きは、
野菜から始めた
最初の数年の名残、
ということになりますね。

「100%田植えを辞めます」と宣言した2021年

水稲に移ってから
チャンネルで
繰り返し
語ってきたのが、
苗を育てて植える田植えをやめ、
田んぼに種を直接まく
「直播(ちょくは)」でした。

 

2021年11月5日の動画の
説明欄には、
こうあります。

「ここに宣言しますが、
【僕たちは来年、
田植えを一切止めて、
全て直播に切り替え】ます!」

 

その2週間ほど後には
「日本から田植えは消える!
湛水直播「超」技術論」
という回も出しています。

 

2022年5月には
「遂にスタート、湛水直播!」
として、
専用の機械で
種をまく様子を公開しました。

 

公開中の245本のうち、
題名に「直播」が入るのは
21本ありました。
このチャンネルの
大きな柱だったと
言ってよさそうです。

 

規模の話も
はっきりしています。
先の埼玉県議会の報告では、
当時の圃場面積が
「約90ヘクタール」、
そのうえで
「2030年には約1,000ヘクタール
(鳥取市の農地面積の約30%)に
達する見通し」
と書かれていました。

 

公式サイトの会社概要は、
いま見られる版で
圃場面積を
「105ヘクタール」
としています。

 

ただ、このページには
更新日が無く、
いつ時点の数字なのかは
分かりませんでした。

2026年4月、田植えの再開を報告

2026年4月14日の
「【大切なご報告】
当社は経営の大転換点を
迎えました」で、
徳本さんは
この年から
田植えを再開すると
話しています。

 

動画での説明によると、
2025年に、
水を張った田んぼに
種をまく湛水直播の圃場で
鳥の被害が広がり、
その3割近くで
強い被害が出たそうです。

 

とくにカラスと
カモの被害を
挙げていました。

 

そのうえで、
鳥の被害が広がった区域は
田植えに切り替え、
直播は
水を張らない乾田直播を主に、
湛水直播は
一部をドローンでまく形で
続けるとしています。

 

4年前の宣言を
自分から持ち出して、
田植えはなくなると
言っていたのではないか、
という声があれば
真摯に受け止める、とも
話していました。

 

宣言した本人が、
同じチャンネルで
方針を改めた理由まで
説明しているわけです。

 

同じように直播を試している
農家にとっては、
成功談よりも
参考になる記録
なのかもしれません。

 

同じ年の
4月から7月にかけては、
「「コメ価格高騰、
本当に高いのか?」
コメづくりは金がかかる?」
という短い動画を、
トラクター編、田植え機編と
機械ごとに
Vol.5まで出しています。

 

話を聞く相手は
居川農場長です。
Vol.1は
42万回あまり
見られていました。

不耕起を歌う「NO-TILL」と、世界の農家とのつながり

徳本さんは
歌う農家でもあります。

 

2021年6月に
自作の
「I AM A FARMER」を公開し、
説明欄に
「昨年(2020年)、
収穫を終えて農閑期に入った冬頃から
作詞作曲に取り組みはじめ」
と書いています。

 

2022年の第2弾に続いて、
2024年7月に出したのが
第3弾の「NO-TILL」です。

テーマは、
田畑を耕さずに
種をまく不耕起栽培です。

 

説明欄によると、
「地球上の全農家に
聴いてもらうべく、
歌詞は全て英語」
で、
日本語の歌詞には
「目を覚ませ!世界の農家たち」
という一節があります。

 

この曲は
マイナビ農業の2024年7月の記事が
取り上げています。

 

記事によると、
トゥリーアンドノーフが
不耕起栽培を始めたのは
2023年で、
きっかけは
アルゼンチンの農場の視察でした。

 

徳本さんは
「グローバル・ファーマー・ネットワークという
70近い国の農業者が参加する
ネットワークがありまして。
そこでアルゼンチンの農場を
視察したのが始まりでした」
と話しています。

 

ミュージックビデオは、
鳥取の農地のほか、
ブラジルのマトグロッソ州にある
大豆畑でも撮影され、
2024年2月に
5日ほどかけたそうです。

 

不耕起の弱点を問われて
「収量や品質が
まだ見えていないところでしょうか」
と答えつつ、
「ただ、圧倒的にコストが下がります。」
とも話していました。

 

記事は、合う機械を
まだ見定めている段階だとも
書いていて、
2024年の時点では
試している途中だったようです。

 

2024年には、
グローバル・ファーマー・ネットワークの
クレックナー賞を受けました。

 

12月に
公式サイトで受賞を報告していて、
米国アイオワ州で開かれた
世界食糧賞の授賞式の場で
「I AM A FARMER」を
歌ったそうです。

 

受賞理由について
公式サイトは、
YouTubeでの発信や
環境保全を主眼に置いた農法、
それを歌で世界に伝える姿勢、
日本バイオ作物ネットワークの
立ち上げなどが
「評価されたようです。」
と書いていました。

 

公式サイトのメンバー紹介によると、
徳本さんは
その日本バイオ作物ネットワークの
理事長でもあります。
2026年4月の動画の説明欄に
載っている会社紹介には、
「遺伝子組み換えや
ゲノム編集といった
バイオテクノロジーの
積極的な活用が求められます。」
という一文が載っていて、
公開中の動画には、
題名に遺伝子組み換えを掲げた回も
5本ありました。

 

会社として、
そうした立場をはっきり
打ち出している
ということですね。

2026年8月の「ご報告」は、RICE DAOのCAO就任

2026年8月7日には、
「徳本修一から
ご報告がございます」
という25分あまりの動画が
公開されました。

 

説明欄は
「株式会社トゥリーアンドノーフ
代表取締役の徳本修一から、
皆様に大切なお話がございます。」
という一文だけです。

 

動画の中で
徳本さんは、
2026年6月から
株式会社RICE DAOに
加わったと報告しています。
役職は
CAO(チーフ・
アグリカルチュラル・オフィサー)
だそうです。

 

公式サイトのメンバー紹介にも、
徳本さんの肩書として
「株式会社RICE DAO
執行役(CAO・Chief Agricultural Officer)」
が載っていました。

 

同じページで
徳本さんは
トゥリーアンドノーフの
「代表取締役」のままです。

 

動画では、
トゥリーアンドノーフは
今後も引き続き
鳥取での事業を続け、
そのうえで
RICE DAOの全国の現場も
手伝っていく、
と話していました。

 

同社が掲げる
2030年までに
1万ヘクタールという
目標にも触れています。

 

自分の会社の課題として
ファイナンスとマネジメントを挙げ、
それを近くで学びたい、
という趣旨の話も
していました。

 

鳥取の農場を続けながら、
外の会社で
経営の手法も吸収しようとしている、
ということのようですね。

 

メンバー紹介には
ほかにも、
グローバル・ファーマー・ネットワークの理事、
農林水産省の
食料・農業・農村政策審議会の委員といった
肩書が並んでいます。

 

チャンネルの最新の投稿は、
2026年9月17日の
「「AIが世界を滅ぼす」
世界の識者が警告!
AIは農業を滅ぼすか、
それとも…」
(19分45秒)でした。

 

当サイトが測った11月6日時点では、
それ以降の公開動画は
ありませんでした。

 

田植えを辞めると言い切り、
4年あまり試して、
うまくいかなかった部分を
自分の口で報告する。
その記録が
そのまま残っているのが、
このチャンネルの
いちばんの読みどころ
かもしれませんね。

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